「有限と微小のパン」

森博嗣有限と微小のパン」読了です。犀川&萌絵シリーズ第10弾、最終話。1作目、「すべてがFになる」に登場した天才・真賀田四季、再登場。天才の天才たるインパクトはその言葉が少ないほど大きい物である。つまり「この人も意外と人間だな」と思ってしまった。トリック的にも最終話にしてこれか、というものだったしロマンス的にも決定的なものはない。むしろその意味では5作目の「封印再度」がいちばんの盛り上がりだった。まあミステリなんだからそこに大きな期待をかけるのは間違いなんだろうが。それに主人公のトラウマも解消されるわけでもないし人格の統合が行われるわけでもない(それはまあいいが。「多面体」なんだから)。まだ短編でも顔を見せるみたいだからそちらに期待か?


天才と天才の対峙は美しい。

思いつく言葉はことごとくシミュレートされ、自分が何を言うのかがわかった瞬間に、彼女がどう答えるのかがわかった

結局、最終的に目指す場所はそこなんだと思う。だけどそれはもう、あらゆることに価値がなくなってしまうことと同義だ。ラプラスの悪魔は絶望しないのだろうか?
でも、

「私、最近、いろいろな矛盾を受け入れていますのよ。不思議なくらい、これが素敵なのです」

と思うことができたら、まだ生きていくことも可能なのだろう。