はてなダイアラー絵本百選

standalone2004-07-25


ひろしまのピカ」丸木俊/文・絵(ASIN:4338022019)


友達に子供ができた。ちょっとした時のプレゼントとして絵本というのはなかなか手ごろだ。僕自身も何冊か持って行ったり、あるいは他の誰かが持って来たり。で、気付いた。ほとんど、いやすべてと言ってしまっていいかもしれない、それらの絵本を読んだ覚えが無い。「ぐりとぐら」も「がらがらどん」も「はらぺこあおむし」もまったく記憶に無いのだ。


はてなダイアラー絵本百選が始まった。どんな作品が挙がってくるのか、僕の知っている作品がどのくらいあるか、うん、楽しみだ。ところが、ここまでに挙がった作品の中で読んだことがあるものは「おしいれのぼうけん」ただ1冊であった。


本を与えられなかったわけではない。今でも記憶に残っているお話はいくつかある。ただそれらはいささかマイナであったようだ。絵本に関しては「あー、これ懐かしい!」という体験をしたことがない。

しかも、根本的に記憶力が悪いらしくそれらのお話も全体通してのストーリーやタイトルといったものはほとんど出てこない。ただ一枚の絵であったりエピソードの断片であったりといったものがわずかに残っているだけなのだ。


そんな中で、トラウマと呼びたくなるくらい強烈なインパクトを僕に与えたのがこの「ひろしまのピカ」だ。正直言ってあまり筋とか覚えていない。小さな女の子が体験した原爆の話、といった程度だ。しかし、ただとにかく絵が衝撃的であった。ひたすらに赤黒い画面の中を半裸で逃げ惑う人々。何だかわからないがとにかくすごいことが起きている。胸をしめつける何かがある。心を苦しくさせる何かがあるのだ。

これを読んだ当時は土地としての「広島」も原爆投下の代名詞としての「ヒロシマ*1」も、原爆を「ピカ」と呼ぶことも、いやそもそも原爆というものすら知らなかっただろう。だけどこの作品はその衝撃的な絵でもって僕に「ここに描かれているのはなんだか不快だ、きっと良くないことだ、あっちゃいけないことだ」という漠然とした感覚を刷り込んだ。

別に僕は人一倍声高に「戦争反対!」と叫ぶなんて柄ではないし、戦争だとか平和というものに対して一家言持っているわけでもない。でも“戦争”という言葉を聞くと頭に浮かぶ景色のひとつとしてこの本があるのは、確かなことなのだ。




さて、バトンは味蕾の発達したその舌からやわらかな言葉を生み出すid:cottontailさんにお渡ししたいと思います。事前に根回ししていないので受け取っていただけるかドキドキですが。

*1:「ノー・モア・ヒロシマ!」なんて言う時の「ヒロシマ」ね。