「ねえ」
「うん?」
「"奇蹟"ってあると思う?」
「奇蹟?」
「うん、奇蹟」
「定義によるなあ・・・ちょっと待って」
「?」
教えてgoo辞書!

(1)常識では理解できないような出来事。
「―の生還」
(2)主にキリスト教で、人々を信仰に導くため神によってなされたと信じられている超自然的現象。聖霊による受胎、復活、病人の治癒など。原始キリスト教では当時の魔術信仰に対抗するため、また使徒預言者)のしるしとして特にこれを宣伝した。

・・・(1)ということでいいかな?」
「待って待って待って。何?何で調べたって?」
「goo辞書。ネットでね、英和・和英・国語辞典が使えて、便利だよ」
「あなたは今何をしてるの?」
「車の運転」
「・・・まあいいわ。じゃあその(1)でいいから。あると思う?」
「"常識では理解できないような出来事。"」
「そう」
「うーん、"常識"の所有者が誰かによるな」
「所有者?」
「うん。"僕"の常識で理解できないことなんて山ほどある。今君とこうして二人で車に乗っていること自体、僕にとっては奇蹟だ。逆に"この世界の法則"の常識で理解できない事なんて無い。それは僕らが"この世界の法則"を理解していないだけだ。全ては奇蹟でも何でもない、あたりまえの出来事に過ぎなくなる」
「理屈っぽいのね」
「そうかも知れない」
「いつもそんな考え方をしてきたの?」
「うーん、考えるの好きだし」
「窮屈じゃない?」
「まあ、その理屈がコロコロ変わるからね」
「そう、ね、そういえば」
「え、何か思い出した?」
「ふふ・・・なんでもない」
「・・・そう」
「で、奇蹟、あると思うんだっけ?」
「僕個人から見ればある。世界を客観視すれば無い。でも・・・」
「でも?」
「信じたくなってきた」
「・・・私も」
「・・・」
「ねえ、今ひとつだけ奇蹟が起こせるとしたら、何を望む?」
「君が生き返ってこのままずっとここにいること」
「・・・ありがとう。でも残念、私がここにいるっていう奇蹟はもうそろそろ終わりみたい」
「・・・そうか」
「そう・・・」
「元気で、って言うのもおかしいかな」
「ううん・・・それじゃあ」
「じゃあ」
「バイバイ・・・」